静かな海の様に-11-

夕暮れが早くなって
オレンジ色と紫の空が徐々に蒼に覆われて行く
やがて闇になって、澄んだ冬の空には星がいくつも浮かんでいる

「冬は日が暮れるのが早いなあ」

星の事はよく分からないけれど、
夕暮れの景色も、星を見つめるのも好きだ。
本を持ったまま,じっと私は窓の外を眺めていた

その時,背後で人の気配と、ふっと良い香りに気づいた。

あ.......

「何を見ているんですか」

背後を振り向くと同時に、そうパクさんが言った。
彼は屈んで同じ様に、私の視線の高さで外を眺めた。
間近にある綺麗な横顔

パクさんは何かを見ていたのだろうと,
きょろきょろと視線を動かして外を眺めている

「何もない様ですが...」

「あっ....日が沈むのが早いなって見てただけです.....」

「そうですか。」

にっこりとと微笑むと,パクさんは身を引いた。
横に座ると、紙袋に入ったタッパーを渡された。

「遅くなってすみません。
 本当に美味しかったです,ありがとうございました。」

「いえ、とんでもな...ん?」

中には,紙袋が入っている。
何だろう?と手に取ると

「お菓子です。家の近所にある洋菓子屋さんなんですけど 
 こう言うお礼って,私にあげられる物と言ったらお菓子くらいしか」

「そんな、わざわざ良いのに....」

パクさんは微笑みながら首を振った

「いいえ。早く起きて作ってくれたんでしょう?」

「え?」

何で,早起きしてなんて分かったんだろう。
ちゃちゃっと作ったよ,なんて体で話したはずなのに。
パクさんは何も言わずに微笑んでいた

「美味しければ良いんですけど。
 私は甘い物はあんまり食べないので....」

「そんな。凄く嬉しいです。帰って大事に食べますね」

まさか、来る前からこんな物を用意してくれていたなんて。
会わない日に,私の事を考えて買ってくれたと思うと、嬉しくて。
今までの人生の中で,一番嬉しいプレゼントだ

「嬉しいな...」

じっと焼き菓子の包装を見る彼女
彼は,その程度の物でこんなにも喜んでくれるとは思わず
軽く微笑みながらも,彼女の表情から目を離せずにいた。

「そろそろ閉館ですね。」

館内の放送で音楽が流れると,私はそう言った。

「ええ。本当に待たせてすみませんでした。
 ....これ、雑誌私が返しておきますね。」

そう言って、目の前をパクさんの腕が取り抜けた

.........なんだか、このいい匂い、ドキドキする男性の香り
どこかで嗅いだ事がある様な.......どこだろう?
会社には.....こんないい匂いの香水つける人はいないし。

彼女は首を傾げた。

「暗いですし,寒いから気をつけて帰ってくださいね」

「はい、ありがとうございます。じゃあ....」

何となく,言葉が出てこない。
だって、私が一方的に図書館に通っているだけだもの

「じゃあ、また来週の日曜日」

パクさんがそうニッコリ笑ってくれると
ドキドキして,その一言がとても嬉しかった。
彼は手をバイバイと振る。

その仕草と表情は、業務中のパクさんからは見る事が出来ない、
どこか可愛らしく,幼げな青年の顔を覗かせていた。

「はい、また日曜日....」

終わらせたくない。
2人で一緒にご飯を食べる事が出来た時間を 終わらせたくない。

「あっ....あの」

図書館の方へ歩いて行くパクさんに私は声をかけた。
こっちへパクさんが振り向くと、私は紙袋の手を上に上げた

「ま、また来週も....作ってきます」

「本当ですか?.....はは」

パクさんは顔をくしゃくしゃにした

「また食べたいって言ったら,困らせてしまうかなって,ずっと考えてて
 言えなかったって後悔している所でした。
 はは.....嬉しいな....私も、またご飯持ってきますね」

その一言で,私は一瞬で顔がぽっと赤くなって
見る見るうちに身体もぽっぽっと熱くなっていって
寧ろ今吹いている寒く冷たい風が,心地いい程に思えた

「はい」

ばいばーい

お互いに遠ざかりながら手を振る

.....................................................

それから数日間、ルンルンで仕事をこなし、
雑貨屋さんや老舗のお店で,お弁当箱や包みを見て回る会社帰り
あれもいいな、これも一段と料理が引き立ちそう

こんな風に誰かを想いながら、買い物するのって楽しいな。

「これは保温に優れていて、ランチでも熱々のスープやカレーとか
 色んな物が楽しめるんですよー」

「いいですねえ。」

「今,2個ペアでセット割引があるので、いかがですか?
 ご家族や恋人と一緒に。デートやピクニックにも便利ですよ」

パクさん、喜んでくれるかなあ。
嬉しそうに作ったご飯を食べてくれる顔が浮かぶ

「では,ブルーと,ピンクをください」

............................................

「ありがとうございましたー」

デパートを出ると,街は一気にクリスマスの街頭で光り、
待ち合わせをする恋人達や,ワイワイと騒ぐ学生や会社員で
混雑する金曜の夜となった

「とと....人多いなあ。早く帰らなくちゃ
 はあ、もう今日はあそこのデリでお惣菜買って帰ろう....」

その時、立ち飲みのバルやオシャレな店が建ち並ぶ通りで、
お惣菜屋さんの隣の店で、パクさんにそっくりな後ろ姿を見つけた。
男性3,4人で飲んでいるのか,皆カッコいい人ばっかりだ。

「そういえばユチョン、お前は最近どうなんだよ。女いんの」

「いや,特には」

私は,その呼び名と答える声で,パクさんなんだと気づいた。
いつもの柔らかくて,丁寧な口調とは全く違い、男っぽい口調。
何だか,知ってはいけない一面に遭遇してしまった気がして,気まずい。

「特にはか。まあ、お前はモテるから特定の女作らなくても
 女の方から大勢寄ってくるもんなぁ、司書さん♡」

「本当!いいよなぁ。お前目当てに図書館に来る娘とかいるんだろ?
 フリーペーパーで「お勧め本」とか紹介してたお前の記事見て、
 うちの会社の子もキャーキャー言ってたぜ。」

「まあな。でも、女の子達が欲しいのは”優しくてカッコいい司書さん”だけどな」

「ははは。白馬の王子様扱いかよ。羨ましいなー。
 正直、可愛い客なんかは手え出してんだろ?
 うちの会社の子、結構ナイスボディの黒髪清楚系なんだけど、
 もし来て気に入ったら落として、セックスよかったか教えろよ」

「馬鹿。俺目当てで来る女は,対象外だ。
 向こうから言いよられたって、全然面白くないだろ。」

グッとパクさんはワインを流し込んだ

「おーおー言うねぇ。あ、その子の画像?可愛いじゃん」

「だろー?セックス好きそうな顔してるんだよなあ〜」

私は,全身の力が抜けたかの様に蹌踉めいた。

「次のお客様ー....きゃっ!大丈夫です?」

私は必死にカウンターに手をつくと、
パクさんのいるバルに背を向けて,何もかわずに歩き去った。
今,ここにいた事を絶対に気づかれちゃいけない。

ただ、ひたすらに歩いた

後ろ姿を見られてるんじゃないかと恐怖に駆られながらも
後ろを見て,こちらを見ていない事を確認したい欲求に駆られながらも。

「なんだ?」

後ろで女性の悲鳴が聞こえて,4人は後ろを振り向いた。
しかし,誰もいない........
ユチョンもふと向いた物の,すぐに正面を向くとグラスに口を付けた

どのくらい経つだろうな、真剣に女性を愛さなくなってから。
いや、正しくは「愛せなくなってから」だろうか。
本気で好きだった女の

「ユチョナ,あなた本当にカッコいいんだから
 司書なんて早く辞めて、私が皆に自慢できる大企業に就職してよ。
 じゃないと、アタシ「彼氏の仕事は?」って聞かれて、なんとか誤摩化してるんだから!」

そんな一言を聞いて以来。

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by beckanbecka | 2014-12-02 18:08 | 妄想小説


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