「ああ、その荷物なら処分したよ」

ユチョンとジェジュンは思いもしなかった答えに愕然とした。
運良く運送会社の人間に会えたのに、彼女の手がかりを追う糸は
皮肉にもぷつりと断たれてしまった。

必死で手繰り寄せて来た先に、もう糸は無かったのだ

「それは何故....」

「不要になったからって、いくつか小さい家具だけを車に乗せてっちまった。
　まあ、処分費を貰ったけど使えるもんばっかりだし、勿体なかったけどなぁ」

「その女性は、どこに行くか言ってましたか！？」

ユチョンは慌てて男に歩み寄ったものの、
田舎気質なのかのんびりした男は、首を振るだけであった

「んなもの、言う必要も無いし聞く必要もねえがね。」

「......そうですか.....」

ユチョンは運送会社を後にすると、
電話をカチカチと弄り始めた

「ユチョナ」

「次は不動産屋だ」

「ああ........」

次から次へ
闇の中に見える光りに導かれる虫の様に、彼は微かな光りを探し、
そこへ必死で行き着こうとした。

光りの向こうに揺らめく彼女の姿に胸を震わせ
ようやく光りの向こうへ辿り着けば，蜃気楼の様に彼女が消える。
そうやって，ただ無心に羽ばたき続ける虫の様だと、彼は思った

一日がかりで何件も不動産屋を巡った物の、
やはり彼女の足跡に繋がる手がかりは得られなかった

「ここら辺は過疎が進んでるからな。
　個人で間貸しをしようとしてる家はいくらでもいる。
　全くの情報無しで，ちょっと難しいんで無いかねえ」

「そうですか.....どうも」

最後の一件から出ると
すぐにガラガラとシャッターの降りる音がした

「ユチョナ。..........どこか宿取ろうぜ。
　それで、どっか飲みに行こう、な。」

ジェジュンのファッショナブルな服装は、
田舎の若い女性達の目を一層引いた。更には２人のルックスを持ってすれば
女が集まらない訳は無かった

「お兄さん達どこから来たの？芸能人？」

「あはっ違うよ。俺たちソウルから来たんだ」

「きゃー！すごぉい！ソウルのどこに住んでるの！？カンナム！？」

「んー，俺たちはもう少し奥にある落ち着いたエリアだよ」

「あ！じゃあセレブが住むってよく言われてる地域！？かっこいー♡」

ニコニコと相手をするジェジュンの横で
ユチョンは聞こえているのかいないのか、じっと遠くを見て
明日の事を考えている様子であった。

..........................................

「ふぅ、なかなかましなホテルが見つかって良かったな」

「まあな」

やっと腰を落ち着けたのは、小洒落たモーテルであった。
しかし利用する物はあまりいないのか、割高だからなのか、
２人は簡単に部屋を取る事が出来た。

「でもこのゴムは安っすいやつだな」

ジェジュンはしげしげとベッド脇の備品を物色している

「ユチョナ。使うか？今夜」

ジェジュンは笑いながら振り向いてウィンクを飛ばした

「俺にはそんな元気ネェよ」

ユチョンは疲れが出たのか、のろのろとベッドに横たわった

「あぁん、意地悪ぅ♡」

ジェジュンはクスクスと笑った。
横たわる背中は、彼に何の返答も感じさせなかった。
言葉はもちろんだけど、何の感情も、背中から読み取る事ができなかった。

ジェジュンも近くの椅子に腰かけた

「明日はどうするか、考えようぜ」


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